龍淵橋勾欄羽目
首里城のほとりにあった「龍淵橋」の勾欄(欄干)の石彫を、「琉球王国文化遺産集積・再興事業」(2016〜2020年)の一貫で模造復元しました。勾欄は戦前に失われていましたが、残存する古写真や勾欄羽目などを調査・研究し、粘土原型製作、石膏原型製作、石彫本製作などを行いました。
工程1
原資料の調査
(沖縄県埋蔵文化センター 所蔵)
オリジナルは古写真しか残存しておらず、類似した古い勾欄羽目から彫刻の形状を観察しました。古写真では形が不確かな龍の細部や波文様、2次元からは読み取れない彫りの奥行や深さなどを調査。ノミ跡から仕上げの方法や使用されたノミなどの道具を選定しました。
工程2
原資料トレース・設計図の作成
古写真の勾欄羽目には欠損部分があり、曖昧で細部が見えない箇所も多く存在しました。そこで、古写真をトレースし、類似の原資料(残存する別の勾欄羽目)を参考にしながら、設計図面を作成しました。この設計図面にもとづいて3次元の製作作業を行っていきます。
工程3
塑造(そぞう):粘土原型の芯棒製作
摸造復元には立体模型が必要です。古写真と設計図面を参考にしながら、可塑性(かそせい)が高い粘土で模型を作成します。粘土を使用するのは、欠損などで不確かな部分があるためです。龍のアウトラインや高さを想定し、粘土原型の芯棒を木材などで製作します。
工程4
塑造:塑造原型製作
立体的な芯棒に粘土を重ねていきます。古写真で縦横のサイズを計測し、龍の構造・動勢、全体の構成から細部までを作成。古写真からは読み取れない欠損部分や高さ・奥行は類似の原資料を参考に製作します。塑造は不確かな形を決めるための重要な工程です。
工程5
石膏型取り製作
粘土原型を作る段階で、監修委員会で何度か検討し、最終的な形体を決めていきます。その後、形を留めるために原型塑造に石膏を流し込み、石膏模型に置き換えます。移し替え、キャスティングとも呼ばれる工程で、型取りにはFRP樹脂を用いることもあります。
工程6
石膏原型完成
完成した石膏模型を石彫に使用します。今回の模造復元では1分の1スケールの立体模型を製作しました。その後、石膏模型に縦横の基準線を引いていきます。細かい数値を測定しながら、石彫を製作するための模型となるのが石膏型です。
工程7
石彫
縦・横・奥行のサイズを測りながら、石膏原型に忠実に石彫作業を進めていきます。石彫に使用されているのは、砂岩(ニービ)という硬度のある石材です。龍のダイナミックな動勢や構成など、原資料が製作された際の感性の部分を大切に掘り進めていきました。
工程8
鶴亀文様の製作
原資料の「龍淵橋勾欄羽目」にはおもて面に龍、うら面に鶴亀文様が施されています。おもて面の作業と同時に、同様な資料調査や模型製作を経て、うら面にも鶴亀文様を彫り込んでいきます。表裏一体の勾欄羽目が完成するまでに約2年の歳月を費やしました。